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産業排水処理の基礎知識

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目次

工場や事業場を運営するうえで、排水処理は環境保全や法規制の遵守、そしてコスト管理の観点からも避けて通れない重要な課題です。このページでは、産業排水の基礎知識から業界別の特徴、適用される法律、処理手法まで、排水処理の全体像を把握しておきたい方に向けて、実務に役立つ情報を分かりやすく整理しました。

産業排水とは

工場で製品をつくる過程や、機械・設備の洗浄、商業施設の厨房など、事業活動に伴って排出される水のことです。産業排水には、家庭から出る生活排水とは異なり、高濃度の有機物や油分、人工的な化学物質、有害な重金属などが含まれます。これらがそのまま川や海に流れ出ると、環境汚染や生態系への悪影響を引き起こす恐れがあるため、放流前の排水処理が必要です。

産業排水でよく用いられる
水質指標

適切な排水処理設備を選ぶためには、汚れを正しく把握する必要があります。水質管理の基準となる、代表的な水質指標をまとめました。

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指標名 解説
BOD
(生物化学的
酸素要求量)
  • 微生物が有機物を分解する際に必要な酸素量
  • 数値が高いほど汚れが多い状態
  • 主に河川の水質汚濁を示す環境基準
  • 食品工場などで高くなりやすい指標
COD
(化学的
酸素要求量)
  • 化学薬品で汚れを分解する際に必要な酸素量
  • 微生物が活動しにくい海や湖沼の環境基準
  • 難分解性物質などの把握に役立つ
  • 化学工場や発電所などで重視される指標
SS
(浮遊物質量)
  • 水中に浮遊する不溶性固形物(ゴミや泥など)
  • 水のにごりの主な原因
n-ヘキサン
抽出物質
(n-Hex)
  • 水中に含まれる油分等を示す指標
  • ノルマルヘキサン抽出物質の総称
  • 食品工場や厨房排水で基準超過の要因になりやすい
pH
(水素イオン
濃度)
  • 酸性・アルカリ性の度合いを示す指標
  • 極端な数値は、配管の腐食や微生物の死滅を招く
  • 排水基準を満たすため放流前に中和処理が必要
窒素・りん
含有量
  • 栄養塩類の量を示す指標
  • 閉鎖性水域(湖沼や内湾)における赤潮やアオコなどの原因物質
  • 水質総量規制の対象で地域により厳しい排出基準あり

業界別の排水処理の特徴

産業排水は、業界によって含まれる成分や汚れの濃度が異なります。適切な処理設備を導入・運用するためには、自社の排水が持つ性質を正しく把握することが不可欠です。ここでは、代表的な業界ごとの排水の特徴を整理します。

食品・飲料・水産加工業

動植物油や有機物が多く含まれ、腐敗による悪臭が発生しやすいことが特徴です。清掃時に熱湯や強力な洗剤が流れ込むと、微生物が死滅したり働きが鈍ったりするため、水質の変化に対応できる排水処理システムの構築が求められます。

近年では、微生物への負荷を減らし、強力な油分や洗剤を直接分解する手法としてオゾン処理の導入も進んでいます。

化学工業(化成品・樹脂・化粧品など)

一般的な微生物では分解が難しい人工的な物質や、水溶性の化学成分が多く含まれます。成分が水に溶け込んでいるため凝集剤で固めて取り除くことが難しく、CODの数値が下がりにくいことも特徴の一つ。化学成分によって生物処理を行う微生物が死滅するリスクもあるため、促進酸化処理などで原因物質を分解する手法が有効です。

微生物や薬品では対応しきれない成分への対策として、オゾンの強力な酸化力を活用した導入事例も増えています。

重工業・電力プラント
(金属加工・機械・発電など)

金属加工の過程で重金属などが含まれることが多いため、分離を促す凝集沈殿処理が必要です。

近年では、発電プラントでバイオマス燃料を混ぜて燃やす(混焼)際に発生する難分解性の高濃度CODをどのように処理するかが、水質管理の新たな課題となっています。こうした難分解性物質への有効なアプローチとして、オゾン処理の導入が進んでいます。

製紙・パルプ工業

製造工程で大量の水を使用するため、排水量が多いのが特徴です。木材由来の難分解性有機物が溶け出すことで、特有の強い着色や高濃度のCODが発生しやすくなります。放流先の水質を守るため、脱色処理と高度な浄化機能が求められている業界です。

飲食・サービス業
(大型商業施設・厨房設備)

ショッピングモールに代表される大規模な厨房からは、多量の動植物油と洗剤が混ざった乳化(エマルジョン化)した排水が出ます。通常の油水分離槽(グリストラップ)では油がすり抜けてしまい、地下での悪臭や下水放流基準の超過を引き起こすことが課題です。

このような凝集剤が効かない乳化油や悪臭の解決策として、オゾン処理システムが選ばれるケースがあります。

排水処理の法律と規制

産業排水を自然環境や公共設備へ排出する際は、法規制を守る義務があります。放流先が「河川や海」なのか「下水道」なのかによって適用される法律が異なるため、自社が遵守すべき基準を正しく把握する必要があります。

水質汚濁防止法

工場や事業場から河川・湖沼・海などの公共用水域へ、排水を直接放流する場合に適用される法律です。人の健康被害を防ぐための有害物質の基準と、生活環境の保全を目的としたBODやCODなどの項目について、全国一律の排出基準が定められています。

下水道法

工場や商業施設が排水を公共の下水道へ放流する場合に適用される法律です。下水管の詰まりや下水処理場の機能低下を防ぐため、要件を満たす施設には「除害施設」の設置が義務付けられることがあります。各自治体によって独自の下水排除基準が設けられていることも特徴です。

地域ごとの条例・排水協定

国の基準だけでは環境保全が不十分な地域においては、都道府県が条例で定めるさらに厳しい排出基準(上乗せ基準)があります。また、企業が自治体と公害防止協定を結び、法令よりもさらに厳しい水質基準を設定しているケースも少なくありません。

排水処理の種類

排水処理には、汚れの性質や業種に応じて様々な手法が存在します。代表的な処理方法について、課題や仕組みを整理しました。

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排水処理手法 多く採用される業界・用途 よくある課題
活性汚泥法
(生物処理)
食品工場、下水処理、工場全般
  • 微生物の管理が難しくバルキングが起きやすい
  • 大量の余剰汚泥が発生し、水槽スペースが必要
凝集加圧浮上法・凝集沈殿法
(化学・
物理処理)
食品・水産加工業、化学工業、重工業
  • 定期的な凝集剤(薬品)コストが発生
  • 分離した汚泥の産廃処理費用が負担
オゾン排水処理 化学プラント、大型商業施設、食品工場
  • 従来の設備は電力コストが高く非効率
  • 近年はマイクロバブル技術により改善するケースも

膜分離や活性炭なども含めた、各手法の処理能力やコストの詳しい比較については次のページで解説しています。

活性汚泥法(生物処理)

一般的に採用されている排水処理手法の一つです。水槽内に空気を送り込み、微生物に水中の有機物を分解させることで水を浄化する仕組み。食品工場や下水処理などで広く使われていますが、微生物という生き物を扱うため、水質や水温の急激な変化に弱い点がデメリットです。

注意こんな課題が…

  • 終わりなく続く薬剤・凝集剤の使用
  • 大量の汚泥産廃
  • 糸状菌の異常増殖によるバルキング現象

バルキング現象とは

排水処理で活性汚泥の沈降性が悪化し、沈殿槽で固液分離がうまくいかなくなる状態のこと。汚泥が処理水に混ざって流出(キャリーオーバー)し、処理水質が悪化します。

処理の過程で増殖した微生物の死骸などが余剰汚泥として大量に発生し、その処分が必要になる点も大きな課題です。生物処理の基本メカニズムや、運用中に発生しやすいトラブルを克服するための具体的なアプローチは、以下のページで詳しく確認できます。

凝集加圧浮上法・凝集沈殿法(化学・物理処理)

水中に凝集剤を投入し、油分や浮遊物質、重金属などをフロック(泥の固まり)にしてまとめる手法です。まとまった汚れを微細な泡で水面に浮かせる「加圧浮上」、または重力で底に沈める「凝集沈殿」によって、水と汚れを分離する仕組み。処理自体は安定していますが、凝集剤や、固めた汚泥を産業廃棄物として処分する費用がかかる点が課題です。

オゾン排水処理

OZACによる排水処理フロー全体のイメージ
前処理

調整槽

オゾンによる分解(低分子化)

ファインバブル発生装置からオゾンマイクロナノバブルを放出。オゾンの強力な酸化力と、バブルが弾ける際の圧壊作用により、強固な有機物の鎖を微生物が食べやすいサイズにまで低分子化します。

曝気槽

高濃度酸素と
活性炭含有担体による生分解

水中のオゾンが活性炭の触媒反応で高濃度の酸素に変化。この酸素が、活性炭を含有した専用の担体に定着した微生物を極限まで活性化し、低分子化された汚れを生分解します。有害な排オゾンガスが放出されないため、密閉や無害化設備は必要ありません。

排水

微生物や薬品では分解が難しい物質や、高濃度のCODに対し、オゾンが持つ強力な酸化力で汚れの成分を分解する手法です。近年では、微細な泡を発生させる「マイクロナノバブル技術」と組み合わせることで、従来のオゾン処理が抱えていた電力コストを克服。既存設備に省スペースで後付けできるため、汚泥とランニングコストの削減につながる手法として活用が広がっています。

オゾン排水処理の仕組みやメリットについて、次のページで詳しく紹介しています。

排水処理設備に利用できる補助金

環境省や経済産業省が提供する補助金は、排水処理設備の導入・更新に活用できるケースもあります。省エネ効果やCO2削減効果が見込める設備への更新は補助対象として審査される可能性があり、要件を満たせば初期費用を抑えられる点がメリットです。数百万円単位のコストダウンにつながる可能性もあるため、自社の設備更新で使える制度がないか事前に把握しておくことが大切です。

排水処理施設のメンテナンス

水質の悪化や機器のトラブルを防ぐためには、排水処理設備の日常点検や保守・整備などのメンテナンスが不可欠です。定期的な部品交換や高額な汚泥引き抜き費用、属人的な日常点検などは現場の大きな負担となるため、維持管理のコストと手間を抜本的に削減する仕組みづくりが重要視されています。

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